実は不眠症等の睡眠障害はうつ病と非常に関係があります。そして通常の不眠症とうつによる不眠症では、不眠の症状の出かたが少し異なったりもします。
ここ近年では「心の風邪(かぜ)」と呼ばれるうつ病ですが、「風邪」という言葉が使われている通り、実は結構身近な病気だったりします。
通院しているうつ病患者は100万人を超えると言われていますが、治療をしていない人を含めると実は300万人ほどいるとも言われています(ちなみにがん患者数150万人、糖尿病患者数240万人ほどなので、うつ病が身近な病気だということが分かると思います)。
不眠症等の睡眠障害はうつ病のサイン?
まず、睡眠障害等の不眠症はうつ病の前触れ(前駆症状・初期症状)と言われており、うつ病を発症する90%以上の人が不眠や睡眠障害の症状を訴えると言われています。
さらにうつ病の種類によっても、どういった睡眠障害になりやすいかが違ってきます。
単極性うつ病(大うつ病) | 不眠症 |
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双極性うつ病(双極性障害・躁うつ病) | 躁状態時には不眠(中途覚醒が多くなる)、うつ状態時には過眠 |
メランコリー型うつ病(典型的なうつ病) | 不眠症の早朝覚醒が多い |
非定形型うつ病… | 過眠 |
不眠症以外の睡眠障害では、概日リズム睡眠障害のひとつである睡眠相後退症候群※の患者の約半数がうつ病になりやすいとも言われています。
※睡眠相後退症候群は睡眠リズムが後退する睡眠障害で、朝方近くにならないと眠たくならないという症状です。詳しくは↑の記事で書いています。
ちなみに冬のうつ病(夏にも起きる季節性感情障害)は過眠等の症状に加え、過食になりやすい傾向があり、無性に甘いモノや炭水化物を食べたくなってしまうというような症状もあります。
冬のうつ病に関しては↑の記事で詳しく書いています。
うつ病による不眠チェック
以下のチェック項目に、今現在自分が該当する項目をチェックしてみましょう。
- 寝つきが良くないor悪い
- 夜は眠れない、朝起きるのがつらい
- 起床時にぐっすり眠ったという熟眠感がない
- 勉強や仕事や家事をやる気がしない
- 趣味など今まで楽しめていたことが楽しめなくなった
- 食欲がないor体重が減ってきた
- 物音や騒音が気になる
- 疲れがなかなかとれない(常に疲れを感じている)
- 最近、物事を悲観的に考えてしまう
- 不眠以外にも、体の不調(頭痛や胃腸の不快感、めまいや動悸を感じる)がある
この10項目のうち、5項目以上当てはまるのであれば、うつ病の疑いがあります。
通常の不眠症とうつによる不眠症は違う?
そしてうつ病による不眠症が通常の不眠症と違う点は、急速に不眠の症状が悪化するところです。
通常の不眠症はまず寝つきが悪い入眠障害(入眠困難)があらわれ、夜中に何度も目覚める中途覚醒、ぐっすり眠った感覚がない熟眠障害と徐々に徐々に不眠の症状が出てきます。
対してうつによる不眠は、入眠障害、朝早く目覚めてしまう早朝覚醒、熟眠障害の症状が早い時期に重なって出てしまいます。
またうつによる不眠には睡眠薬が効かない場合もあります。
うつによる不眠症の特徴とは?浅い睡眠が多くなる?
さらにこのうつ病の不眠症の特徴として、浅い睡眠のレム睡眠が多くなり※、深い睡眠のノンレム睡眠(特にステージ3と4が少なくなる)が少なくなる傾向があります。
※通常、睡眠に入るとまずは深いノンレム睡眠が90分ほど続きレム睡眠に変わるりますが、うつ病の方はこのノンレム睡眠が60分未満しか続かずに、レム睡眠に移行する場合があります(レム潜時の短縮が起こりやすい)。
特に深いノンレム睡眠が少なくなることで、脳の休息が十分に行えないという点で、寝ても何故か気分がすっきりしないというな状態になるのです。
仮にノンレム睡眠を十分な時間行えたとしても健康な人と比べ、脳の休息が通常のノンレム睡眠よりもそこまで行われていないことも分かっています。
うつの人は睡眠中も体温が高い?
また補足ですが、うつ病の人の睡眠中の体温(深部体温)は健康な人と比べると、約0.3~0.5℃ほど体温が高いと言われています。
通常、眠りにつくときには体温が下がって眠りにつくようになっているのですが、うつ病の方は体温が高いまま睡眠をとってしまうので、結果浅い睡眠が多くなり睡眠の質が悪くなってしまいます。
はっきりとしたことは分かっていませんが、睡眠中に体温を下げる仕組みがうつ病によって不調をきたしていると考えられていて、不眠の症状にさらに拍車をかけているわけです。
まとめ
- 不眠症はうつの初期症状としてあらわれることが多い
- うつ病による不眠は通常の不眠症よりも複合的な症状が出てくるのが早い
- うつ病による不眠は深い睡眠のレム睡眠が少なくなり、反対に浅い睡眠のレム睡眠が多くなる
うつ病の原因として、よく言われるのが脳内のセロトニン不足です。セロトニンは鎮静効果がある脳内物質で、興奮物質のドーパミン、不安物質のノルアドレナリンをコントロールしています(この2つの物質をコントロールできないためにうつになるわけです、厳密に言えばうつ気味の人がやる気がなくなったり元気がなくなったりするのはノルアドレナリンも不足しているからです)。
またセロトニンは脳で代謝されると、睡眠ホルモンであるメラトニンに変化するため、セロトニンという脳内物質はうつ病にも睡眠にとっても非常に重要な物質であることが分かると思います。
ちなみにこのセロトニン自体は食品には含まれおらず、大豆等に含まれるトリプトファンが体内で変化してセロトニンに変わります(詳しくは↓の記事でトリプトファンについて触れています)。